時には逆説的に考える~いち葬儀屋さんの雑記~

いち葬儀屋さんが葬儀関連をメインにそれ以外の事も「時には逆説的」に「時には普通」に考える超個人的ブログ

自宅での葬儀が減少している理由

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葬儀といえば自宅か菩提寺が当たり前だった時代もありましたが、現在では自宅での葬儀は都心部を中心に激減しています。

最近では葬儀の縮小化により「故人の好きだった自宅での葬儀をしたい」というニーズも増えてきてはいるものの、やはり葬儀社の持つ葬儀場や公営斎場等での葬儀が大部分を占めています。

自宅での葬儀がなぜ減少したなぜのか?様々な理由があると思いますが、今回は私の個人的見解も含め考えていきたいと思います。

葬儀への関わり方の時代的変化

村から会社へ、会社から個人へ

村(地域コミュニティ)での葬儀

もともと葬儀は村社会で行うものでした。

ちなみに「村八分」という言葉がありますが、なぜ「八分」なのか?

残りの「二分」は火事と葬儀の事を指します。

火事は放っておくと火が燃え広がり村全体に被害を及ぼし、葬儀は遺体をそのままにしておくと疫病が広がる可能性がある。

それらを避けるため、共同体としての防衛策がこの「残り二分」なのです。

葬儀は人手もかかり、村として大きな行事でした。

会社(社会コミュニティ)での葬儀

時代と共に産業が発展していき、一次産業から二次産業、三次産業へと移り変わると都心へ人口が集中し、地域コミュニティが担っていた葬儀は会社へと引き継がれることになります。

高度経済成長期からの景気の良かった時代、会社は終身雇用が前提であり、会社員の葬儀にもある程度協力的でした。

村では総動員だった葬儀は、会社により総動員ではないにしろ人手を出し社員に協力するのが当たり前でした。

個人(身内)での葬儀

バブルの崩壊により余裕のなくなった会社に加え、高齢化社会が進むことにより現役社員の葬儀の減少や退社して数十年も経つOBの事を知っている社員も少ない、それらの理由により会社が葬儀に関わることは徐々に減っていきました。

そこで葬儀は個のものとなり、今に至るのです。

関わり方が変わることによる変化

村社会で葬儀を行っていた時は自宅や菩提寺での葬儀が基本であり、規模が大きくなれば集会場を使用する等で収まっていました。

しかし、村から会社に関わりが変わると、好景気も相まって葬儀の規模は徐々に大きくなっていき、自宅で葬儀を行うのは困難になってくると、葬儀社は葬儀に特化した式場を建て、葬儀を式場で行うようになっていきます。

式場で葬儀を行う事が当たり前になると、会社から個に葬儀の主体が移り、規模が縮小したとしても葬儀は式場で行うものだという慣習になり、葬儀社もニーズに合わせ家族葬専門の式場を建てたりして、現在の式場を使用する葬儀の形になっていると考えられます。

物理的変化による影響

前項で書いたように時代と共に葬儀へ関わるコミュニティは年々変化していきますが、それと共に、そもそも住居も大きな変化をしています。

もともと各地方にて村が形成されていた時代、人口は一極集中する事もなく、家は平屋の一軒家、もしくは長屋等が多かったの対し、産業が発展していくと都心部に人口が集中することとなります。

そうすると、都心部を中心にマンションやアパート、団地等の多階層の住宅が増えていき、物理的に自宅での葬儀が難しくなっていきます。

また、住宅の密集化により自宅で葬儀を行う事による近隣への迷惑等も考えると、式場を使用するという選択が一般的になっているのかもしれません。

また、火葬が一般的になり、自宅から火葬場までの移動や手間を考え、火葬場に併設されている斎場を使用するケースも多いように感じます。

その他の要因

これまでは時代の変化による比較的受動的な要因でしたが、葬儀屋として自宅での葬儀の減少を加速している人為的要因があると考えています。

自宅で葬儀をするということ

本来、葬儀屋とは葬儀の用具(葬具)を販売、レンタルするだけの仕事でした。

そこから徐々に葬儀一体をお世話するという形に変化していきました。

自宅で葬儀をするということは、一件一件の違う形状や間取りをしている家で葬儀を施工するということです。

毎回違う家で祭壇を組み、幕を張り、会場を設営していきます。

それこそ経験を積み、技を磨かなければ素早く会場設営などできません。

ある種職人の世界であり、祭壇の設営などはかなりの力仕事になります。

自宅で葬儀をするということはそういうことなのです。

式場で葬義をするということ

時代の流れと共に自社の式場で葬儀をする流れがやってきます。

するとどうでしょうか、毎回祭壇を運ばなくてもよく、決まった形状の会場に幕を張り、数パターンのレイアウトで会場を設営するだけで良いのです。

少し手の込んだ生花祭壇を組んだとしても、そのほとんどは花屋の仕事です。

結果的に葬儀屋は自宅で葬義を行うよりも式場で葬儀を行った方が労力は少ないのです。

自宅での葬儀が大変だと知っている葬儀屋さんは自社式場や公営斎場を使用することを葬家に勧めます。

そうすることで、自然と式場を使用する時代の流れに、更に人為的作用を加えたことにより、流れを加速させるだけでなく、一般的にそれを定着させたのではないかと、個人的には思うのです。

まとめます

自宅から式場に葬儀の場が移る事で葬家の負担も少なくなっていますし、前項に書いたように葬儀社の負担も少なくなっているのは事実です。

そして、その流れに反して自宅で葬儀を行いたいと望むニーズが最近出てきているのも事実です。

どの形態が正解かは葬儀を行った当事者にしか分からないかもしれません。

しかし、どのような経緯で葬儀が今の形になっていったのかを考えることも必要なのかもしれせんね。

このブログを読んでいるそこのあなた!

今一度「葬儀の形態」や「葬儀の今までの成り立ち」について考えるいい機会かもしれませんね!